「シマヅさん。どうせ飲むなら高円寺で飲みませんか?」
Concent編集長、酒井さんから突然連絡が来た。
「やだっ……!私、今日、疲れ切ってゾンビみたいな顔しているのに!初めて会う人に悪印象与えちゃう! ……まぁどうせセッ(以下自粛)」
そんなことを考えつつ(*1)、酒井さんと会い、お話を聞いてみたところ、どうやら私がTwitterで外国人ネタを頻繁に投稿していたのを見たのがきっかけで、「こいつを高円寺在住の外国人と飲ませてみよう!」と思い立ったらしい。
ということで、今回は、英語も分からないし、酒が好きなだけで〈酒豪〉って肩書きをつけられた私が
高円寺在住の外国人の方と飲み、衝撃の事実を読者の方に報告するよ!
(*1)酒井さんはお酒飲めない方でした。よって、考えるだけ無駄でした。
素晴らしきかな生大
ーー取材当日。酒井「こんばんは。酒井です」
シマヅ「こんばんは。シマヅです。よろしくお願いします。ところで、今日はどこのお店に行くんですか?」
酒井「決めていません。どうしようかなぁ。あ、とりあえずあそこで」
あそこ↓
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典型的な高円寺ガード下の居酒屋。一人で飲むには最高で、私は大好きでよく利用するけど
今回はお相手がいるし、しかも外国の方。
「こんなところで酒が飲めるか!」と、ビールのケースで作られた簡易テーブルを、ちゃぶ台返しされないか、ちょっと不安がよぎる。しかも酒井さん、カメラも持たずiPhoneで撮影しようとしてる。こんなラフでいいものなのか……。
ここで、お相手の方のご紹介。
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お店を見たフィリップさん。笑顔で「高円寺だね~!」と一言。とっても気さくな方で一安心。
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路上に面した席に座り、まずはご挨拶
シマヅ(以下、S)「初めまして。シマヅです」
フィリップ(以下、P)「初めまして。フィリップです」
S「本日はよろしくお願いいたします。あ、飲み物は何にしますか?」
P「まずは、えーと、生……」
S「じゃあ、私も生……」
P「……の大で」
!?
失礼ながら、さすがアメリカ出身の殿方だ、きっと生の大なんて生の小くらいの感覚に違いない、と勝手に想像し、早くもカルチャーショックを受ける。
S「じゃあ、生の大を2つ!」
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でもほら、生大飲まなきゃ女の恥、って言うし
高円寺とは、日本であり外国である
S「高円寺を選んだ理由と、高円寺から離れない理由を聞かせて下さい」P「何度か日本に旅行に来て、凄く素敵なところだなと思ったから住み始めたんだよ。だけど、前は高田馬場に住んでいて、そこの大家さんが、大家さんの知人を紹介してくれたんだ。外国人が家を借りるのとか結構大変なんだけど、その紹介してくれた人が色々助けてくれて、高円寺の家に住むようになった。単純でゴメンネ(笑)」
S「選んだわけではなくて必然的にそうなったってことですね」
P「そう。だけど、住み始めて一週間くらいで高円寺大好きになった。この町は他の街と全然違う。この町の人は、とてもコスモポリタン。世界的なことを凄く分かっている」
S「コスモポリタン……?」
P「例えば、本物のイタリアンの味を知っていたりとか。だけど、凄くジャパニーズでもある。六本木とか全然ジャパニーズじゃない。高円寺は外国みたいなんだけど、ザ・日本って感じの、不思議な街だよ。あと、高円寺はありのままの自分でいいやと思わせてくれる街。というか、ありのままの自分でいいよ、他人に合わせなくていいよ、と街から言われてる気がする」
高円寺凄い!!!
住みたい街No.1が吉祥寺から高円寺になる日は近い!
S「とても良いお言葉をありがとうございます。そして、日本に来てくれてありがとうございます」
P「いえいえ、こんな素敵な国を作ってくれてありがとうございます」
ここで私が間違いを犯す。
酒井さんから「(シマヅさんが飲むと酒代がバカにならないので)事前に飲酒してきてください」
と言われていた私は、言われたとおりに、500mlの缶ビールを5本やっつけてから現場に向かったので今なら何でも言えちゃうよってくらいにはホロ酔いだった。
だからこう言った。
S「えへへっ!作っちゃいましたっ!日本☆」
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お前は何を言っているんだ?
いい話をぶち壊してしまい、本当に申し訳なかったと、今は反省している。
求められる大和撫子
S「フィリップは7年日本にいるとのことだけど、日本の女性はどうですか?魅力的な部分はある?」P「あるある。日本の女性は結構、真面目そう」
S「真面目そう?例えば?」
P「うーん、いい人を見つけて、その人と良い繋がりが出来たら、ずっといられそう」
S「いられそうって?」
P「なんだろう……。本当に恋愛感情があれば、浮気とかしない。でも、若いうちに結婚しなきゃって考えている人がこの国には凄く多くて、恋愛感情もなく、ただ結婚したいから結婚しちゃう、って人もいる。そういう人は浮気とか結構してるかもね」
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(……あれ?フィリップさんは私と昔会ったことがあるのかな?違うよね、多くの日本人女性が、私と似たような感じってことだよね?)
P「愛情があれば浮気しないけど、愛情がなければ浮気する。正直、この国は結構多いと思うな。けど、その愛情を大事にする。それが魅力だね。あと、アメリカとか西洋の人にとっての『昔の女性』ってイメージがある。例えば、アメリカでは、女性がシャツにアイロンかけるとか絶対にしないんだよ。それは自分でやれ!って(笑)僕たちとしては、やってくれると嬉しいんだけど……。あと、病気とかになったら、日本の女性は面倒を見るのが上手だね。周りで結婚した人とかの話を聞いてると、病気になったり困ったりしたときに『理解してくれる』って意見が多いな。アメリカの女性は『しっかりしなさいよ!』とか、強い感じで、あまり面倒見てくれない(笑)。『とっとと元気になりなさいよ!私仕事行くから!』って感じで。まぁでも、どんな国でもみんな人それぞれだし、僕は日本の女性のエキスパートじゃないから、あくまでもイメージね(笑)」
話すことと日本人「俺、喋らない方が良いのかな」
S「フィリップは日常の中で『俺日本人っぽいな~』って思うことあります?」P「あるよ。最近ビックリしたのは、人に合わせるようになったこと。もともとそんなタイプじゃなかったのに、日本に来てから相手の空気を察して、緊張してる人の前では緊張したり、そういうのが多くなったね」
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Clik here to view.![何かを考えるフィリップさん。まさか、この記事のために、例のあの言葉を……!?]()
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何かを考えるフィリップさん。まさか、この記事のために、例のあの言葉を……!?
P「僕、日本の文化で面白いと思うことがあって、空気読めっていうのあるでしょ」
S「ありますね」
P「僕はアメリカ人だから、自分の意見があったら言わずにはいられない。これは僕が育ってきた国の文化によるものだから、変えられないんだよね。で、日本人は、日本語を喋れない外国人には日本の『空気読め文化』を求めないのに、日本語ができると、日本の文化に合わせることを相手に期待する。日本語をしゃべるだけで、日本人と同じように空気を読むルールを求められるんだよね。日本語喋れなくて、日本の文化も知らない外国人は、やりたい放題なのに誰も文句言わない(笑)」
S「たしかにそんな場面はよく見るかも」
P「そういう外国人を見てると、『いいなぁ~。俺、日本語話さない方が良いかな』とか考えちゃう(笑)空気読めに関する話をすると、西洋には空気を読む文化はないし、そもそも西洋の人は、会話が深いところまで行くのが凄く好き。面白いと思えば、それについてとことん話したい」
P「今日何があって何があってこうだった、とか、そういう会話にはあまり興味がないんだ。軽くてつまらない。雑談はちょっとでいいんだよね。お互いに興味のあることについて、深く語り合いたいんだよ。世界がどうなっているのかを『こういうことが起きたよね』だけじゃなく、『なんでこういうことが起きたのか』とか、そういうコアな部分まで話したい。つまり、自分の意見を言ったり相手の意見を聴いたりすることが、凄く好きなんだ」
S「日本人は逆に、深くならないよう気をつけて話すことが多いですね」
P「それで、僕ビックリしたことがあってね。日本人には空気読めって文化があるはずなのに、『この人とは二度と会わないだろう』って人には凄くコアな話をするんだよね。僕は若い頃、ヒッチハイクで日本を旅していた時期があるんだけど、そこで出会った人はみんな、外国人の僕に色々話してくるんだよ(笑)たぶん、人付き合いを人一倍大切にするから、身近な人には当たり障りのない話しかできないのかな。で、面白いと思ったんだ。実はみんな話したがってるじゃん! て」
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Clik here to view.![なるほど。なぜTwitterが日本で流行ってるのかを紐解くのに大事な意見(かもしれない)。 私はネット上での言動と普段の言動にほとんど差はありませんが……]()
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なるほど。なぜTwitterが日本で流行ってるのかを紐解くのに大事な意見(かもしれない)。
私はネット上での言動と普段の言動にほとんど差はありませんが……
憧れの国際恋愛
だいぶ酔っぱらってきた私。酒乱のスイッチが知らぬ間にONに。S「フィリップは、今フリーですか?」
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(爆笑)
えええええええ!? どういうこと!?!?!?!?
P「はい、そうです」
S「(あ、良かった、普通の返事だ)おっと!これはねらい目ですね!私もフリーです!」
P「では、これからもよろしくお願いしますね(笑)」
当たり障りのない感じでこの話題は終了しました。いや~、国際恋愛って難しいですね。
ポテトとケチャップから名言は生まれる
ここで私は気が付いた。さっきからテーブルの上にある、これ。
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実はこの日の数日前に、私はこんなツイートをしていた。
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私とフィリップさんが料理を注文することはなかった。
つまり、このテーブルの上にあるフライドポテトとケチャップは、私のツイートを読んだ
酒井氏による「やれ!」という圧力であると思われる。
何度もタイミングを見計らい、冷や汗をかきながら、私は口を開いた。
S「あの……とっても失礼な質問かも知れないのですが、今ここにフライドポテトとケチャップがあるじゃないですか。で、アメリカではフライドポテトとケチャップは野菜だからとても健康にいいってことになっているらしいっていうのをよく聞くんですけど、それって本当なんですか?」
P「あはは、本当じゃねぇよ」
(エヒタコノヤロー!怒らしたやないか!!!!)
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S「あ、そ、そうなんですね……」
P「それはアメリカ人でも皆、冗談で言うね。でも、それは大きな文化の違い。日本人は、健康的だから食べてっていわれたら食べるでしょ。アメリカ人は、健康的だから食べてっていうと絶っっ対に食べない。でも、健康にこだわる人は極端にこだわる。日本人は、健康的なものも健康に悪いものもバランス良く食べるよね。そういうところは凄いと思う。とにかく、アメリカには健康的だから食べるって文化はなくて、好きだから食べる。好きじゃなかったら食べない。好きだったら行動する。好きじゃなかったら行動しない。人生短いよ? 好きじゃないことしてどうすんの? 嫌なことなんてする暇がない! そんな文化」
S「凄い名言出ましたね!」
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Clik here to view.![日本酒追加で上機嫌になるフィリップさん]()
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日本酒追加で上機嫌になるフィリップさん
P「たとえば、僕タバコ嫌いなんだけど、それは健康に悪いからじゃなくて臭いが嫌いだから。健康とかどうでもいいんだ。好きか嫌いかなんだ。あ、それで思い出したけど、僕むかし日本人とシェアハウスしてて。どうやら相手は喫煙者だったらしいんだけど、一緒に住んで4ヶ月目で初めて彼がタバコを吸っていることに気が付いたんだ。そんなに上手に隠れて何かをすることは、絶対に日本人にしかできない。日本人は忍者だからね」
……さすがにこの流れで日本人はもう忍者じゃないよ! とは言えなかった。
読んでくれてありがとう! そろそろ終りだよ!
S「最後に、高円寺について一言お願いします」P「……僕は思うんだけど、高円寺に住んでいる外国人は、結構(日本に)長くいて、日本のこと好きな人が多いと思う。もし高円寺に不満があるとしたら、緑が少ないところかな」
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ここに書ききれないほど、たくさんの素晴らしいお話を聞かせていただいた。
フィリップさん、貴重なお話をしていただき、本当にありがとうございました!
今回のまとめ
高円寺は外国のようなだけど日本そのものな不思議な街であり、「ありのままの自分でいいよ」と語りかけてくれる街でもあり、人生は短いんだから嫌いなことしてどーすんのって思うし、ポテトとケチャップは野菜ではない。[ライター/シマヅ、 カメラ/酒井栄太]
<取材協力>
やきとん とんきち 高円寺店
東京都杉並区高円寺南3-58-17 1F
TEL・予約:03-3317-3681